厚い雲の切れ間から一瞬だけ
間隔の空いた細い雨が黒いアスファルトを濡らしている。
空には灰色のどっしりとした100トンも ありそうな雨雲が上空に
ふたをしていた。
こんな時こそ強風が吹いて この雨雲をゴゴゴゴと動かして欲しい。
もしくは いっそのこと、最新型ダイソン掃除機でこの雨雲を吸い取ってみたい。
今日は楽しみにしていた皆既日食。
午前中、仕事の手を休めて僕は空を眺めていた。
太陽が出る瞬間を待ちかまえていたのだった。
しかし、厚い雲は僕をじらすように ゆっくりと流れ続ける。
まれに灰色の雲から 白く明るい雲になる瞬間があった。
ほんの一瞬だけ少し欠けた太陽を見る事ができたが、それきりで右手に
持っていた皆既日食メガネも出番がないまま、ついには本格的に
雨が降り出した。
日食の時間が過ぎてみると 先ほどまで点いていた街灯は再び消え、
セミが鳴き始めていた。
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