ゲットバック、海の男
毎日、見舞いに通う母親から父の容態を聞く
「だいぶ調子が良かど」
仕事で休日しか病院に行けない僕としては、にわかに信じがたい
そんな風に言うのは恐らく僕を安心させる為だろう
ようやくやって来た休日
病院へ向かう
これまでに状態の危うい日もあった
生きた父と会うのはこれが最後と覚悟を決めた日もあった
しかし病室へ行ってびっくり
父は顔色も良く穏やかにしている
ベッドの背を少し起こし、腕には腕時計をはめて、携帯電話を触っていた
以前は無意識に暴れる為に両腕はベッドに縛り付けられ(点滴の針が取れてしまう)、話しかけても意識は無く、目はとろんとしたままだった
なので、信じられん
処置の関係上、話すことは出来ない
しかし、あいうえおボードさえ使えなかったのに今はノートに自分の気持ちを書くようになった
周囲からは「さすが、海の男だ。帰ってきたね」と言われた
「もう無理だろう」と思っていただけに嬉しい
そう言ってもベッド周りの機械から延びた管が幾つも体に繋がっている
まだまだ安心出来ないだろう
少しづつ時間を掛けて見守るしか無い
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